「早苗さんは、最期とても安らかに眠りました」
───嫌だ。
「居合わせていたのは、僕と医師の方だけでした。瞼を閉じる前、彼女は僕に今までありがとう、それからおばあちゃんを頼みますと言いました」
───嫌だ。
「……早苗さんとこの家で暮らしてきました。一度離婚したことは知っていましたが、息子さんがいたことも、今日初めて知ったんですよ」
───聞きたくない。
耳を塞いでしまいたかった。これ以上、聞いてしまったら。
もう、何も救えない。……馬鹿だ、俺。少し期待してたんだ。お母さんが、もしかしたら俺のことを想ってくれていて。11年間の間、ほんの少しだけでも一瞬だけでも、俺のことを、柚月のことを思い出してくれていて。
本当は、憎まれたって別に良かったんだ。
忘れないでいてくれたら、それで良かったんだ。……なのに。
それすら、俺の勝手な思い込みだったんだ。



