佐藤くんは甘くない



新谷さんは、しばらく何も言わなかった。


じっと、俺を見て何かを見透かすみたいに、見つめて───そしてそれから、言った。








「何も、聞いていません」









それが、答えだった。



声も、出なかった。

ただ、目の前にある事実を突き付けられてそして、その事実が受け止められずに、ただただ茫然とするしかなかった。


もう、それが答えだった。


お母さんは、俺のことを、何とも思っていなかった。

あの日、お母さんの手を手放して、ずっと11年間、柚月のことを思い出すたびに涙が止まらなくなって、一人で声を押し殺して泣いた。


泣いて、泣いて、それでも自分が許せなくて。


でも、お母さんは違った。


……お母さんにとって、俺はどうでもよかったんだ。

だから何も言わなかった。何も、……何も。