いきなり、おばあちゃんが立ち上がった。
びっくりして、おばあちゃんの行動に目が離せないまま追いかける。おばあちゃんはすぐ後ろの桐箪笥に手を伸ばした。一番上の棚を開けて、そこから一枚の封筒を取り出す。
そして、もう一度俺たちの目の前に座ると、すっとそれをテーブルの上に差し出した。
「これは、」
「早苗の最期を看取った人物の居場所です」
お母さんの、死ぬ間際、隣にいた人物。
そして、おそらくお母さんが家を出て行ってからの11年間───誰よりも、お母さんを知る人物。
それは。
「……誰、ですか」
結城と、自分の声が重なる。
おばあちゃんは、張り詰めた表情を浮かべながら、言った。
「───早苗の、再婚相手です」