居間へ移動すると、すでにテーブルの上にはご飯やみそ汁、おひたし、里芋の煮っ転がし、卵焼き。色とりどりの朝食が並んでいた。
俺の隣に結城が座ると、おばあちゃんがその前に座る。
いただきます、の合図が居間に響き渡った。
久しぶりにまともな朝ごはんを食べた気がする。中学校からじいちゃんの家で、二人きりだったから、朝食はパンと牛乳とかだったし。
今は味すら覚えていないけれど、柔らかめのご飯も、サツマイモの入った味噌汁も、どこか懐かしい。
3人の間に、会話はなかった。
テレビもついていないから、聞こえるのは鳥のさえずりと皿がこすれ合う音だけ。
ちらり、と結城を見る。何か考え事をするように、無心でご飯を口に運んでいるのが見える。
結城が、何を考えているのか……なんとなくだけど、分かる。
昨日───結城が言った言葉。
それでも、佐藤くんは、すべてを知る、覚悟がありますか。
すべて。
それは、おそらく〝僕〟も俺も知らない、お母さんの真実。
それを、結城は握っている。……怖い。堪らなく、怖い。
お母さんに恨まれていることを、憎まれていることを、知るのが堪らなく、怖い。
でも、それでもいい。
そう、思えた。
それでも、知りたい。お母さんがどう思って、どう感じて、どうして消えてしまったのかを。