耳元で、震える吐息がかかる。
それは、何かを言うべきか迷うかのよう。
そうして、結城は俺の頭を優しく撫でながら、言った。
「佐藤くん、教えてください」
「……」
「佐藤くんには、覚悟がありますか」
覚悟。
その言葉に、息が止まる。え、と声が漏れて。結城は言うべきか、というよりも戸惑うように小さく息を吐いて、それから落ち着いた声で、もう一度つぶやく。
「佐藤くんには、覚悟がありますか」
「……な、にを」
「───佐藤くんのお母さんの、真実を知る、覚悟がありますか」
「し、んじつ」
真実───この期に及んで、そんな事実があるというのだろうか。
お母さんが、俺を憎んでいて。大嫌いで、そして家から出て行って。それ以外に、何があると何が残っているというんだろうか。
「たとえ、それがどのような結末を迎えるとしても」
そっと、結城が顔を上げて、両手で俺の頬を包み込む。ただ一点、吸い込まれるように彼女の瞳を見つめる。訴えかけるように、もう一度、彼女は言った。
「───それでも、佐藤くんは、すべてを知る、覚悟がありますか」



