「───あなたに、話さなければいけないことが、あります」
凛とした、ヒナゲシの様な声。
その表情は、何かを決心したように見えた。
聞きたくない。
その言葉を───聞きたくない。なぜか、そう思った。
ほろほろと、心が崩れ落ちていく音が聞こえる。空へ向かって浮遊する蛍が、どうしようもなく儚げに見えて。
「───随分と、長いこと言えなかった。あなたにだけは、どうしても。幼いあなたにそれを口にしてしまえば、きっとあなたは壊れてしまう、と思ったから。
……けれど、もうきっと、大丈夫ね。あなたなら、前に進むだけの力が、立ち直るだけの強さがある。だから、もう、いいのよね」
誰かに確認するみたいに、目を細めながらおばあちゃんはつぶやいた。
ありもしない約束を、傷らだけの体で精一杯守ろうとするみたいに。



