違う、違う、違う。
頭の中で何度も否定しながら、俺は気づけばおばあちゃんのところまでやってきていたらしい。
はっと、顔を上げると───憂いに満ちた表情で、川辺のすぐそこで、地上に降る星のように浮遊する蛍を見まわる結城を見ていた。
ふわり、と幻想の光がおばあちゃんの横をかすめる。
「那月くん、」
「……はい」
「もう、大丈夫なのね」
一瞬、言葉の意味が分からなかった。
そうして、視線の先に答えがあることを、知った。
「……はい、たぶん」
「そう。良かった……良かった」
噛みしめるように、何度もその言葉を繰り返す。そうして、ゆっくりと俺の方に顔を向ける。
やけに、澄んだ瞳だった。何もかもを、知って、それでもなお道を見失わない強い瞳の色。それは、数年前俺が喉から手が出るほど欲しかった強さだった。
点滅しながら、蛍がまた一匹、浮遊していく。
それを目で追いかけながら、ぽっかりと空いた寂しい月を見上げた、その時。



