佐藤くんは甘くない



はっと、我に返った。


振り返ると、向こうで懐中電灯を振りながら、呼びかけるおばあちゃんの影が見える。


「あ、あ、い、行きます……!!」


急ぐように、結城が大声を上げる。そうして、するりと繋いでいた手をすり抜けると、おばあちゃんの方へ走っていく。


その背中を見ながら、俺は思わず口元を押さえた。


いま、何を。


何を、言おうとした。



俺は、今───何を。



考えれば考えるほど、さっきの状況で言おうとしていた言葉が、自分では思い浮かばなくて。というよりも、そんなことあるわけないと、頭の中でその答えを何度も何度も打ち消す。



違う。

絶対に、違う。


断じて、違う。