佐藤くんは甘くない



***


「佐藤くん、速く!」

「あーもう、腕痛いって」


クズる俺を、半ば強引に結城が引っ張る。


数歩前で、懐中電灯を持ったおばあちゃんがにやにやしながら、ちらちらこちらを窺ってくる。


……ったく、なんで女子ってこう蛍とか好きなんだろう。ただ光るだけじゃん。


嬉しそうに、頬を上気させて蛍を探しまくる結城。


「あっ、佐藤くん佐藤くんあれ蛍っすかね!?」

「馬鹿、ただの街灯だっつの」

「ちいっ」


悔しそうに顔を顰める結城。……あほだ。


そうして、また何かを見つけたように土手の端まで駆け寄って。

川に指を指して、何かを言おうとした瞬間、崩れるように結城の体が前のめりになって、



「───わ、あ」


「───っ!!」



思わず、結城の腕を力強く掴んで、引き寄せる。

ふわり、と甘い匂いが鼻をかすめる。なんだか、心がむずむずして落ち着かない。