血のつながらない母親。


慣れない会話。


無理やり仲良くしようとほほ笑む笑顔。


たった、12歳の子どもが背負うには重すぎる枷だった。そのいびつな関係は、糸のほつれ目のように、だんだんと分かれ始めていく。一つ、二つ、三つと。


決定打になったのは、ほんの些細な事だったらしい。



けれど、それが引き金になって、佐藤くんは中学校に上がる頃、自宅よりも近いという理由で今住んでいる、おじいちゃんの家へと引っ越した。


それから一度も、自分の家に帰ったことはないのだと。


昨日の佐藤くんの様子から見るに、もしかしたら薫さんはたびたび佐藤くんの様子を見にあの家に訪れていたのではないかと思う。


そして、そのたびに佐藤くんはああやって、自分の心を自分でえぐり続けていることにも気づかないで、追い返してきた。




……もしかしたら、佐藤くんは来ないかもしれない。


このどうしようもないやりきれない、憂鬱な心のまま学校へ。



けれど、その予想は大きく外れた。