目頭の隅の、透明な輝きが私の心を、ぐっさりと突き刺すような痛みを与える。

その人の浮かべた表情は、私に語りかけたおじいちゃんの表情とまったく同じだったから。おずおず、と差し出されたその手に、白い便箋に包まれた手紙が置かれている。



『しばらくして、那月の父親───克彦が再婚した。


 だが、那月は居場所を見つけられなかったんだ。


 ……だから、今こうして一緒に暮らしている』



私は、それを手に取った。

ゆっくりと、安心したように微笑むその女性。そうして、私から数歩下がった後、


「私、結城といいます。結城、こはる。……あなたは……?」


半ば強引に、声を張り上げてその人を引き留める。


『アイツはもう何年も帰ってない。

 ……女嫌いなのもそうだが、それ以上に〝母親〟だってことが、アイツの中でセーブを掛けているんだろう。

 置いて行った母親と、血のつながらない母親、アイツが逃げ出そうとするのも、無理ないのかもしれない』



すでに背を向けていたその人が、ゆっくりと振り返る。そうして、夜にひっそりと佇む夕顔のような繊細な声で、言った。





「───佐藤、薫と言います。……佐藤那月の母です」





佐藤くんの、義理の母。


そしておそらく、佐藤くんの抱えた問題と関係のある人物だった。