佐藤くんは甘くない



佐藤くんは、きっと覚えているんだろう。

けれど、躊躇うように何度も何度も、小さく息を吸う音が聞こえては、吐き出していく。

そして、ようやく、佐藤くんの掠れた声が私の耳に届いた。





「───ゆ、るす。俺を、許す」




あの時、言った言葉を佐藤くんの耳にしっかり届いていた。

私は、それが嬉しくて、小さく笑ってしまう。


「……うん。そうです。だから、私は佐藤くんを許します」


「……でも、」


佐藤くんが何かを言おうとして、途中で言葉をきる。私は、そのあとに続く言葉を容易に想像できた。……朝比奈さんと瀬尾が、自分を今まで通り接してくれるか分からない。だろうか。

……本当に馬鹿。


いつもあんなに、強気に私たちに突っ込みいれたり毒舌吐いたりしてるのに。こうも弱気な佐藤くんじゃあ、調子が狂うじゃないか。

早く、いつも通りに私たちにばか、とかあほ、とか言ってほしいって、思ってるのに。

私は、せせらと大声で笑った後、




「───馬鹿にしないでください。私の友達が、そんなことを許せない奴だと思いましたか。

 思われていたなら、かなり心外です!」