佐藤くんからの返事はなかった。
その代りに、ぴくりと肩が震える。……それが、答えだった。
佐藤くんは、きっと怖いんだ。
自分が嫌われるんじゃないかって、離れていくんじゃないかって、怖いんだ。……私には、その気持ちが痛いほどよくわかる。
そして、その痛みは今も続いたままだ。
そんな後悔を、佐藤くんにも味わわせたくない。
「───佐藤くんは、やって後悔するよりも、何もせず、後悔しないほうがいいと、思いますか」
私がそう問うと、佐藤くんはしばらく押し黙った後、
「……しないほうが、いいに決まってる」
と、小さな声で答えた。
「私も、そう思っていました。……でも、最終的に、後悔することになるんです」
「……どういう、意味」
ぎゅうっと、手を握りしめた。爪が食い込むほどに。
俯けば、思い浮かぶのは真っ白なシーツと、そこに浮かぶ黒い斑点。それはとめどなく、増え続けていく。
伏せていた顔を上げて、私は言った。
「───人は、一度逃げると、それが癖になってしまうから」



