佐藤くんは甘くない



***


くすくす、とひとしきり笑ったところで、


「……すまんな」


と、すぐ目の前から、とても悲しい含みを持った声がした。

ふっと小さく笑うその人は、佐藤くんのことをとても心配していて、大事にしているんだと伝わってくる。


「那月が無愛想で」


「あっはっは、もう慣れましたッす」


「そうか」


おじいちゃんが笑う。初対面の時は、佐藤くんの綺麗な顔とはだいぶ離れた厳格な面持ちにカルチャーショックを受けたけれど、笑ったときは佐藤くんとよく似ていることに、気付く。


「こはるちゃん」


すうっと、心に入り込んでくるような芯の通った声。


私が向き直ると、おじいちゃんはきりっと眉を上げて、


「もし、那月がどうしようもなく困っているとき、どうにもならなくて立ち止まって一人で泣いているとき、どうか、どうか───」



ずるり、と座卓から体を移動させて、深々と私に頭を下げる。


「───どうか、アイツを助けてやってほしい」


しゃんとした、声色。

私は一瞬、私よりも随分と時を重ねてきた人が、目の前で頭を下げることに面食らった。だけど、その肩が小さく震えていることに気付く。


真剣なんだ。

真剣に佐藤くんのことを、考えている。……なら私も。