佐藤くんは甘くない



***



『いつ、帰ってくる?』



ぼんやりと、いつもより低い視線が映し出される。


行かないで、というようにそいつは、ぎゅうっと目の前の女性もののコートを握りしめる。その小さな手は、あまりにも頼りない。


見上げると、その人は───とても、悲しそうに見下ろしていた。


そして、握りしめた手をそっと包み込む。あまりにも冷たくて、氷の様な手だった。



『───誕生日に、帰ってくるよ』


『本当?』


『……約束』


ふわり、とその人が優しく微笑む。ほっと、安心した。そうすると───俺の表情を見た、その女の人の瞳から、ぼろぼろ、ぼろぼろ、とめどなく透明の雫が零れ落ちて、止まらない。


くいっと、顔を覆うその人の袖をひっぱって、見上げる。その人は、震える手で、ぎゅうっと自分よりも何倍もある体で抱きしめる。


『───ごめんな、さい』


くちから、ぽろりと声が漏れる。


『───ごめんな、さい。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい』


壊れたように、何度も何度も、何度も謝った。