佐藤くんは甘くない




時計を、見た。


……遅い。遅すぎる。


佐藤くんが出て行ってから、かれこれ30分以上たっていた。


ちょ、佐藤くんどんだけお茶にこだわり持ってんだよ。85℃で10分蒸らした後にちょっとずつ茶葉を投入していくみたいな、専門家張りの美味しいお茶を入れてくれてるのだろうか……ってんなわけねえよ!!


自分でツッコんでしまった。


よくよく考えたら、マスクしてたし、いつもより不機嫌だったし、もしかしたらまだそんなに回復してないんじゃ。


一度そわそわしだしたら、やっぱり駄目だった。


「は、鉢合わせたら……適当に誤魔化せばいいよね」


私はおずおずと、立ち上がり───誰かに見られていないか用心深く、あたりを見回して佐藤くんの部屋から出る。


左右に続く長い廊下。

電気がついていないからか、まだ夕方なのにあたりは薄暗い。



部屋を出るとき、確か佐藤くんは左側の廊下を進んでいったはずだ。


前を向くと、一本に続く永延と続く廊下に、少しだけ背中がひんやりと冷たいものが這う。