ピンポォーン。
と、軽やかな音が流れる。そして、門扉の先、玄関の方からバタバタと足音が聞こえた。
いまどき珍しい引き戸のドアには、うっすらと黒い人影が映し出される。そして、そのドアが開く───
「───はい、なんのごよ、」
ドアを開けた張本人が、そこまで言って、固まる。
大きなマスクに、灰色のだぼだぼスウェット。ところどころはねた黒髪が、今さっきまで寝ていたことを表していた。
いつもより何倍もおでこに皺が寄っている。不機嫌オーラマックスだ。寝不足なのか、目の下にクマができている。
私は手を上げて、苦笑いしようものなら、
「スイマセン、お帰りください」
何も言わずドアを閉めようとする。
「ちょ、ちょ、ちょ、待て!!」
「……何の用」
はあ、と大きくため息をついて───佐藤くんが、もう一度ドアを開ける。
「と、とりあえず看病に来ました」
おずおずと買ってきたスーパーの袋を顔と同じ高さにあげると、佐藤くんが物凄く不機嫌に、
「……入れば」
と、ドアを開けるのだった。



