本当は、そんなこと思ってないくせに。
瀬尾は、私のために、私が二度と傷つかないように嘘をつく。
私のために、あっさりと、嘘をつく。
「……嘘」
私がそういうと、瀬尾は掴んだ腕を強く握りしめる。
「嘘じゃねえよ。
お前がどう思おうと、どう感じようと、お前に嫌われたとしても、お前が拒んでも。
お前の気持ちよりも、お前を守ることの方が───ずっと大事なんだよ」
目を閉じた。
瞼の裏側で、あれほど忘れたいあの記憶が、鮮明に映し出される。
また、私は瀬尾を傷つける。
私を守ろうと、自分自身を傷つけていく。
それが、嫌で嫌で、嫌で嫌で堪らなくて───なのに、それを終わらせられない私が、もっと嫌いだった。
噛みしめた唇から、鉄の味がした。
こんな言葉を言わせてしまったことが、悔しい。
瀬尾に、そんなことを言わせてしまったことが、苦しい。
私は、小さく息を吐いた後、ゆっくり体の力を抜く。これ以上、瀬尾を心配させないために私ができることは、たった一つだ。



