佐藤くんは甘くない



ふわりと、シャンプーの匂いが鼻をかすめる。


回された手が、震えていた。ぎゅうっと、力がこもっていく。痛いくらいに。



声が出ない。血の気が一気に引いて、息をしようとするたびに空気の塊詰まるように、途切れ途切れの呼吸しかできない。

俺は、ほとんど反射的に、その温かさから離れようと何度も力を込めて押し返そうとする。そのたびに、腕の力が強まっていく。



「離せ、離せっ……!離せぇ!!」


泣きわめく子供みたいに、俺はバンバン彼女の肩を叩いて、暴れる。

優しくするな。俺なんかに、優しくするな。


そうやって、優しくされたら───




「───ふっっざけんな」





耳元で、溜めこんだものをすべて吐き出すような、大きな声が聞こえた。


「ふっざけんな、離してやるもんか……!」


「っっ、」


視界が、滲む。耳元で叫んだ声は、頭が真っ白になるくらいに響く。