ふいに、何があふれてきそうになる。
それをぐっと堪えた。
だめだ、こんなんじゃだめだ。
アイツの優しさに……すがっちゃ、ダメだ。
「佐藤くん!!」
今度は、さっきよりもはっきりと輪郭を持った声が聞こえた。ぽつぽつと、黒くなっていく地面に、赤いスニーカーが映り込んだ。
それは、すぐに、俺の目の前にやってきて───
「───佐藤くん!!」
両手を広げて、通せんぼのように立ちはだかる。
俺は立ち止まった。
息が、切れる。苦しい。全部吐き出してしまいそうだった。
でも、惨めになりたくなくて、これ以上迷惑かけたくなくて、俺は奥歯が割れそうになるくらい噛みしめる。
はあ、はあ、と腹の底から吐き出すような荒い息が聞こえる。それだけで、視界が滲んだ。
「……佐藤くん、」
「……」
「佐藤くん、」
そういって、白い手が伸びてくる───ばちん、といつかのように俺はその手を振り払う。
もう、結城を頼っちゃ、だめだ。
これ以上、傷つけたくないから、縋っちゃ、だめだ。



