佐藤くんは、自分が何をしたのか、分からずただ呆然としていた。


けれど、その瞳にだんだんと光が戻って行くほど、肩が、瞳が、手が、口が、震えていく。私たちを見て、違うって否定することもしないで、ただ、震えていた。


まるで、自分が犯罪者で、死刑判決を受けた罪人のように。




「───っっ、」


佐藤くんが、私たちから後ずさるように立ち上がった。そして、振り向きもしないで一心不乱に走り始める。



「佐藤くんッ!!」




───ダメだ。


いま、佐藤くんを一人にしたら、絶対に、ダメだ!


心のどこかで、私を突き動かすような声が響いた。私も立ち上がる。

隣にいた瀬尾が、それを制止するように私の腕を掴んだ。


「おい、どこにっ、」


一気に溜めこんだ息を吐き出すように、


「───瀬尾はっ、瀬尾はひまりちゃんのそばにいて……!!私は佐藤くんを追いかける!!」



手を振り払って、私は呼び止める瀬尾の声に振り向かずに走り始めた。