佐藤くんは甘くない




一番聞きたくなかった。


その言葉を、私は、瀬尾から、絶対に聞きたくなんてなかったのに。もう、二度と聞きたくなんてなかったのに。


「……ごめん」


どうして、私は謝ったのだろう。

分からないけれど、謝らなければいけないような気がした。



瀬尾は、私の言葉をどう受けとったのか分からないけれど、ふっと唐突に重ねていた手を離す。

あんなにも冷たいと思っていた体温が、離れると少しだけ淋しかった。


無言だった瀬尾が、机に置いた湿布を手に取って振り返ると、


「じゃ、湿布張るからそれ、脱いで」


いつもの瀬尾がそこにいた。


「あーい」


私もいつも通りに答える。カーディガンを脱いで、襟のボタンをはずして、そのまま瀬尾に背を向ける。


「ちょっと冷たいから我慢しろよ」

「うん」

ちょっとだけ目をつむって、湿布が貼られるのを待つ。


……遅い。何時まで経っても、冷たいのがやってこない。


不思議に思って、後ろを振り返ったとき。