佐藤くんは甘くない



私は痛みのあまり、声を漏らしてしまった。

ぎゅっとつむった瞳をゆっくりと開くと───すぐそばに、瀬尾の顔があった。


逸らすべきだ。

逸らさなかったら、私は、瀬尾に謝らなければならなくなる。一体、どんな顔してどうやって謝ればいいのか、分からないのに。



「なんで、」


「……」


「なんで、無茶すんだよお前は」


くしゃっと、瀬尾の顔が歪んだ。私の左手を引いていた手が、だんだん弱くなっていく。

それだけで、私の心はナイフにでも切り裂かれたみたいに痛かった。左肩の痛みなんかよりも、何倍も痛かった。



「お願いだから、俺の前だけは嘘はつくな」


「……」


「痛いときは痛いって、助けてほしいときは助けてって。言って。俺は、ちゃんとお前の所に行くから。すぐに行くから。だからっ」


瀬尾が、ぎゅうっと私の左手を握る。その手は恐ろしいくらいに冷たかった。



「だから、お願いだから。


 俺にお前を、守らせてくれよ」