佐藤くんは甘くない




ぼやけた視界の中で、この世の終わりみたいな悲痛な顔で、私のところにやってくる馬鹿が一人。


そいつは、佐藤くんを押しのけて、ひまりちゃんを押しのけると、


「何があった……っ?」

「あははー、こりゃ、ちょっとあり、まして」

「お前、」


そういって、何かを言いかける。けれど、ぐっとそれを飲み込んだ。







「───ごめんね、瀬尾」



小さく、本当に小さく呟いた。

聞こえたのか聞こえていないのか分からなかった。


でも、一瞬瀬尾の瞳が開かれたのを、私は見逃さなかった。



そうして、騒ぎを納めにやってきた店員がやってくるまで、瀬尾は一度も私の手を離すことは、なかった。