佐藤くんは、何も言わず男の手を離した。
ばたばたと複数の走る足音が聞こえて、それも次第になくなっていく。
「……っ、はあ、ぐ……っ、あ、」
燃えるように熱かった。
唇を噛みしめて、私はゆっくり呼吸を繰り返す。
大丈夫、この痛みは違う。本当の痛みじゃない。大丈夫、大丈夫、大丈夫。
「こはる、ちゃん……?だい、じょうぶ?」
涙目になりながら、ひまりちゃんが私の顔を覗き込む。私の顔を見ると、ひまりちゃんは息を飲んで、顔がだんだん真っ青になっていった。
……あはは、どれだけひっどい顔してんだ私は。
「……大丈夫。ちょっと、痛んだだけ、だから」
立ち上がろうと、足に力を入れる。ひまりちゃんは、その私の手を握って起こそうとしてくれるけれど、力なく、私の足はすとんと崩れ落ちた。
あはは、ざまあない。これじゃあ、心配かけさせてばっかりだ。
あちゃー、このままだときっと───
「───ハル!」
ほら、やっぱり来てしまう。



