佐藤くんは甘くない




「───……ちゃん、こはるちゃん……!!」


途切れ途切れに声が聞こえる。

必死に、私の名前を呼んでいた。


がくんと、力が抜けてそのまま床に膝をついてしまった。ひんやりと、膝に冷たいものが流れてくる。オレンジジュースが、気持ち悪いくらいにまとわりついてきた。


「ああ?ちょっと掴んだくらいで、なにそれ」


嫌そうな顔したその男が、私の目の前にしゃがみこんで───ぐらぐら揺られる視界の中で、真っ黒な手が私の方に伸びてくる。


そうして、頬に触れようとした、そのとき。







「───触るな」








何かが、その黒い手を阻んだ。