佐藤くんは甘くない



……落ち着け。


「や、めて……くださ、」

「わー赤くなっちゃってかーわい」


……落ち着け、私。


「やめて、くださ」


ひまりちゃんの声だけが、私の鼓膜に響く。


「───やめて……!」






ああ、やっぱり、我慢できない。

……ごめんなさい、恭ちゃん。





「……ああ?」


茶髪の男が声を上げた。

私は、もうほとんど反射的に、ひまりちゃんに触れた汚い手を掴んでいた。


「なんだよ、お前」


一層低く唸るように、私にそいつは言った。

ちっとも怖くなんてなかった、けれど、それでも、私は一瞬あの時の恭ちゃんの顔が思い浮かぶ。


迷いそうになって。それでも、やっぱり我慢できなくて。