瀬尾が、私の前に広げていたノートを横にずらすと、一人で勉強し始めていた佐藤くんの前にばっと出した。
「なあ、佐藤」
「……なに」
佐藤くんが不機嫌そうに、ノートから顔あげた。
瀬尾はベストタイミングだと言わんばかりに、
「ここがさ、結城がよくわかんないらしくて」
「……これが?」
佐藤くん、なんで私のことをそんな怪物でも見るような目で、みるのかな?
君ら、人類がみんな自分と同じような思考を持っていると思ってんのかね?
「だからさ、」
佐藤くんが小さくため息をついて、そのノートを私の前に広げると、
「ここに代入するときは、」
「ふむ」
佐藤くんが細かく書き込んでいく。
「この条件でしか入らないから、この条件だとy以外当てはまらないでしょ」
「こはるちゃん、たぶんこことここの公式が上手く整理できてないんじゃないかな」
ひまりちゃんが横から、手を伸ばすと佐藤くんのメモに付け加えた。
「だからうまくできないんだと思うんだけれど……佐藤くん、どう思う?」
そういいながら、ひまりちゃんが口元を綻ばせながら佐藤くんに微笑む。一瞬、佐藤くんは言葉を失ったように、口を小さく動かして、それから、
「……うん、そう、思う」
ぎこちなく、視線を逸らしてぶっきらぼうに呟いた。
ただ、その口元が少しだけうれしそうに緩んでいたことに、私もちゃんと気づいていた。



