「───待ったかな、佐藤くん」
佐藤くんに触れようとしていた不躾な手を、遮るように柔らかな声がした。
ところどころにレースをあしらった、薄桃色のワンピにふわふわの薄茶色の髪。そして、口元に浮かべる優しげな笑み。───ひまりりゃんだった。
ひまりちゃんは、不機嫌をそのまま表情にも隠さず食って掛かろうとするお姉さま方に何やら、笑顔で受け答えすると、遠くの方を指さして何かを話しているようだった。
ひまりちゃんが言い終わると、お姉さま方は悔しそうに顔を歪めながらも、撤退していく。
「す、すごい。なんて言ったのかなひまりちゃん」
「さあ」
一応、難関は突破したみたいだ。
よかった、佐藤くんも無事で。
ほっと肩をなでおろすと、なぜかむすっとした瀬尾が、
「心配しすぎなんだよ、お前」
「だって、佐藤くんってなんかほっとけないし……」
「……あっそ」
諦めたようにため息をつく。そうして、前髪をくしゃっと掴んで顔を伏せた。
それは、瀬尾が嫌なことがあったときにする癖だった。



