「一年生の春に」
佐藤くんがそこで区切って、一瞬言葉に詰まらせる。
そうして、その思い出が目の前であるかのように、優しく口元を緩めて、普段の口調ではなく、柔らかな声音で、
「運悪く、隣の席だった朝比奈さんと日直を任された。
でも、俺は女が嫌いだったから、黒板を消すときも、ごみを捨てに行くときも、一人でいいからあんたは勝手に帰ってって、すごい……酷いことばっかり、言ったんだ」
「……」
それは、容易に想像できた。
私もひまりちゃんと一年の春、同じクラスになったとき。
佐藤くんは、いつも不機嫌そうで、綺麗な顔をしているから女子たちに注目されていたけれど、結局一言も女子と言葉を交わしているところは見たことがなかった。
その時は、重度の女嫌いだとは思わなかったけれど、佐藤くんと好き好んで話そうと思う女子はもういなかったのも確かだ。
「……別に、嫌われたっていいって思ってた。興味もないし、それにウザいから。いちいち関わるのも面倒だって」
そういって、佐藤くんが苦笑いする。
その笑みは、横顔だから分かりにくかったけれど、苦痛に歪んでいるように見えた。
「だけど、」
だけど。
「───だけど、待ってたんだ」



