佐藤くんは甘くない



「……先行く?」


佐藤くんが、そういって私の方を向く。


「まあ、別に急いでるわけじゃないので少しくらい待ってやりましょうか」



私がそういって笑いかけると───なぜか、佐藤くんは少しだけ目を見開いて、そっか、とつぶやくと小さく笑った。


「……なんで笑うんですか?」


「ううん」


私は何かおかしなことを言ったのだろうか。

けれど、佐藤くんは小さく首を振ると、なぜか柔らかくへにゃっと目を細めると、


「……似てる」


とても、小さくそうつぶやいた。

それは、本当に聞き取れないほどに小さな声で、言う。似てる、と。私は一体、誰に似ているのだろう。こんな奴が世の中に二人といるなんてちょっと驚きだ。


「さっき、」


「はい?」


「さっき、言ったよね。俺が、朝比奈さんを…………すきになった訳」


「ああ」


瀬尾の部屋のあれのことだろうか。

私が小さく頷くと、佐藤くんは目の前を通り過ぎていく車を目で追いながら、上の空で言うのだった。