「あーっと、その……」
うう、沈黙が痛い。
私はこういうとき、なんていうべきなのかまったく思い浮かばないタチなのだ。瀬尾のようにうまいこと切り抜けるすべもないし、ひまりちゃんのように優しい言葉を掛ける語彙もない。
「……俺、」
佐藤くんが沈黙を破った。
まさか、佐藤くんから話が振られると思わなくて、私は思わず固まる。
ちらり、と見上げると───思った以上に佐藤くんの顔が近くにあった。私は、一瞬息が止まりそうになって、でもその綺麗な黒の瞳から目が離せなくなってしまう。
「───ガキじゃない、から」
掠れた声で、そういって、佐藤くんがまた離れていく。
おびていた熱が離れるように、私の頬にかかっていた吐息がふいに消える。
ドクン、ドクン、心臓が痛いくらいに暴れて、苦しすぎて私は顔を伏せた。
佐藤くんって、こんな低い声が出るんだ。
佐藤くんって、こんな大人っぽい表情するんだ。
私は、どうしても佐藤くんが意地っ張りで、照れ屋で、可愛い佐藤くんのだったから、今の佐藤くんが、全然違うものに見えてしまう。
落ち着け、落ち着け、心臓。



