佐藤くんは甘くない



***


「完全、のぼせた……」


女湯ののれんをくぐると、70くらいのおばあちゃんの番台がどうだったー?と聞いてくるので、私はよかったですーと苦笑い。


佐藤くん、たぶん先に出たからもういるんだよなぁ。


あんまり顔を合わせたくないのが、本音だ。



なんか、私の中で佐藤くんは友達で、気の置けない大事な友達で、それ以上でもそれ以下でもないから。


こういう風にぎこちないのが、とても息苦しい。


「うー」


佐藤くんが赤くなる時のように、私もぎゅうっと自分の着替え一式を抱きしめて呻く。


そんな私を見かねたのか、おばあちゃんが、


「何か心配事かい?」

「自分が情けなくって、今全力で後悔してるとこです……」

「そうかいそうかい。そういう時は───どうせだから、お風呂上りにいっぱい、いるかい?」


隣にいた番台のおばあちゃんが、ごそごそと背後から何かを取り出して、私の前にかざす。


昔ながらの底の厚い、牛乳瓶に入った、薄茶色の液。コーヒー牛乳、2本だった。


……なぜ二本?

そう思って首をかしげると、おばあちゃんらしからぬウインクで、


「カレシと喧嘩したんだろ?これやるから仲直りしてきな」


……おばあちゃん、ありがたいけどいろいろ誤解していらっしゃった。