佐藤くんは甘くない



しばらく、返答がない。

あれ、おっかしいな。聞こえてなかった?


もう一度、私は息を吸って、


「さーとーうーく、」



「……さい、聞こえてる」


途中で乱暴にさえぎる声が、響き渡る。どうやら物凄い不機嫌だ。何をやったんだ瀬尾。


ぴたん、ぴたん。天井から水滴が零れ落ちる。私はそれを頬に受けて、片目を思わずつぶった。


「なに。銭湯で話しかけるとか頭おかしいの?」


うわ、佐藤くんのドスの聞いた声が響き渡る。迫力あるな、ほんと瀬尾何やったんだ。


「ええっとですねー、そっちの持ってる桶に黄色い小さなボトルありませんー?」


無言。

けれど、敷居の向こう側からごそごそと何かをよけるような音がした後に、


「これ?なんか英語で表面に書いてあるやつ?」

「あ、それですそれ。上から投げてもらえますかー?」


私がそういうと、佐藤くんが仕方ないなぁとめんどくさそうに言うと、びたびた足を進める音、いやこれは後ろに下がってるのか?


そして、はい!という掛け声とともに、敷居の向こう側から、びゅんっと早い勢いて、こっちに黄色い何かかが飛んでくる。


「わあ、あっとっと、とと、と」


私はあわてて、着地地点まで行って、何とかキャッチ。ふう。佐藤くん容赦ねえな。はは★いっくよ~★とかそういう青春のフリはないのかね。