馬で軍の前へと歩み出る。

「女神国女王、戦乙女だ!貴国の指揮官と話がしたい!」

谷の向こう側に居並ぶ帝国軍へと叫ぶ。

その呼びかけに対し。

「…戦の前に命乞いが『東』の流儀か?」

黒雲のような甲冑の群れの中から、一人の男が出てきた。

他の兵と同じく鈍色の甲冑なのだが、その男のみ純白の外套をまとっている。

髪は金の短髪。

左耳には蒼く透き通った宝石の耳飾り。

整った顔立ちではあるものの、その表情は野性味に溢れる。

野心家だというのが一目でわかる、挑戦的な眼。

すぐにわかった。

「貴殿が帝国の皇帝か」

私の言葉に。

「『陛下』をつけろ小娘。たかだか十万程度の小国の女王が、俺と対等のつもりか」

その男…皇帝は見下した返答を返した。

「…進軍の理由を聞きたい」

私は皇帝に問う。

ハン、と。

皇帝は嘲笑う。

「わかりきった事を…この地は荒れている。その戦乱を鎮め、この地唯一の覇王となる為に、俺はまず西の地を掌握した。ならば次は東の地だ。道理が通っておるだろう?」