黒木は軽快なフットワークを使っているが、前のラウンドと同様に踏み込みが浅く、ポイントとなるようなクリーンヒットは出ていない。
相手は、黒木が出て来ない事を感じ取ったようである。前へ出て積極的に打ち始めた。
迎え打とうとした黒木の右ストレートと、相手の右ストレートが相打ちになった。
両者は共に一瞬たじろいだ。ガードを固めて後退する黒木に対して、相手はバランスを崩しながらも、すぐに攻撃へ移った。
守勢にまわった黒木は堅いブロッキングで凌いでいたが、相手はガードの上から、お構い無しにラッシュをしている。
ガードの隙間から、相手の右ストレートが黒木の顔面にヒットした。
黒木が防戦一方になっていたのもあり、レフリーがダウンを宣告した。
清水が言った。
「こりゃ番狂わせがあるかもな」
カウントを数えられている黒木は、ガードを上げながらチラッと青コーナーを見た。ダメージは無いようだが、少し弱気な表情である。


