臆病者達のボクシング奮闘記(第四話)

「まぁ、そういう事にはなるが、バンタム級の残り三試合は見ておかないとな。……大崎、お前は着替えたら、あそこで俺と試合観戦だぞ」

 飯島はそう言うと、応援席の空いている場所を指差した。



 その後、三つの試合が終わり、森谷の番になった。

 相手は身長が百七十センチあるか無いかで、ウェルター級(六十九キロ以下)としては背が低い方だ。

 サウスポースタイルで、以前はライトウェルター級(六十四キロ以下)で試合に出ていたが、この大会から階級を上げていた。


 石山が兵藤に言った。

「アイツ、国体予選の時はお前に判定負けしたんだよな」

「奴はタフだぞ。何発かいい右フックを当てたんだが、すぐに打ち返してきたしな」

「ガチャガチャ打ってくるような感じだったけど、パンチはあんのかよ?」

「左は体ごと叩き付ける感じで打ってきたから、結構あると思うんだが……。言っとくけど、俺は殆んど貰ってないんだからな」


 石山は「分かってるよ」と言って小さく笑った。