臆病者達のボクシング奮闘記(第四話)

 飯島はやんわりと否定した。

「いや、この試合だからこそ打たせるんだよ。……次の相手は、どっちが勝っても長身のアウトボクサーだからな」

「……もしかして、あの効果を狙ってるんですか?」

「まぁな。この試合で、派手に倒れる程効果は抜群だしな」

「そうですね」

「俺としては、大崎のアレは全部の試合に打って欲しいよ」

 石山が頷くと、清水が話に加わった。


「どうしてだよ?」石山が首を傾げた。

「最後のスパーで、俺は奴にアレを打たれて今でも首が痛くてな。この辛さを、対戦相手にも分かち合って欲しいんだよ」

「そう言えばお前、アレの後の追撃も直撃食らってたもんな」

「アレは追撃の方が強烈だよ。……ただ今の相手だったら、お前がさっき言ったように、追撃の前で終わりそうなんだよな」

 清水が首筋を擦りながらそう言った時、第三ラウンド開始のゴングが鳴った。