臆病者達のボクシング奮闘記(第四話)

 ラウンド終了のゴングが鳴ると、大崎は、肩で息をしながら赤コーナーに戻った。

 梅田はリングの中へ入り、大崎に深呼吸をさせている。


 飯島は、大崎に聞こえるような独り言を言った。

「誰かさんは、一発で倒そうと力んでるから、疲れちゃってんだよなぁ」


 深呼吸をしている大崎が肩をすくめた。どうやら彼も自覚しているようである。


 飯島が独り言を言った。ただ、わざとらしく声が大きい。

「次のラウンド、いつもの連打が出来れば、石山が教えたアレを打たせたいんだよなぁ」

「本当ですか?」

 大崎がそう言って思わず後ろを振り向くと、飯島はユックリと頷いた。


 隣から石山が言った。

「さすがに先生は、大崎をのせるのが上手いですね。奴はアレを打ちたがってましたからね」

「……これでアイツも、いつものボクシングが出来るといいんだがな」