「相沢はコンビネーションの中に、ディフェンスも組み込んでいるんだよ」

 飯島が言い終わった時、祐也と対戦相手がリングに上がった。


 相手は一度思い切りジャンプをした。ドシンと音を立てて着地した彼は、左右のグローブで、自分の顔を一発ずつ軽く叩いた。かなり気合いが入っているようだ。

 身長が百七十センチ前後の、ガッチリとした体つきである。


 ライトウェルター級で戦っていた兵藤が言った。

「梅田先生、アイツ、インハイと国体予選じゃ出てなかったですよね?」

「去年の秋からボクシングを始めたらしいからな」

 安全上の理由から、高校ボクシングの規則上、ボクシングを始めてから一年間は、試合に出場することが出来ない。


 清水も話に加わった。

「アイツ、昨日の試合は一ラウンドで終わらせてたんですよね。パンチもあったし、面白い試合になりそうですよ」