臆病者達のボクシング奮闘記(第四話)

「団地の駐車場ってお前……。そこでやったら目立つだろ?」

 石山が呆れ顔で言った。


「さすがに昼は出来なくて夜にやってました。電柱の灯りでもスパーは出来るんですよ。……!」

 横山は言い終わると、ハッとした顔になった。


「スパーってお前、アスファルトの上でやったのか?」

 飯島が声を押し殺して言った時、大崎が戻ってきた。


「横山、大崎、ちょっと来い」

 飯島は前後左右を見回し、更に声を潜める。

「お前ら、アスファルトの上でスパーは絶対やるなよ。後頭部から倒れたら、死亡事故にも成りかねないんだからな」


「……最初はマス(ボクシング)だったんですが、俺が熱くなって、スパーになっちゃったんです」

「ワタッちゃんは、僕にスパー相手がいないから、付き合ってくれたんです」

 大崎と横山は違う事を言っていた。お互いを庇っているようだ。

 飯島は溜め息をついた。

「この話は聞かなかった事にするから、もう外でスパーなんてやるなよ」