荒川は意外な程効いていた。立ったものの足がふらつき、セコンドの肩を借りて、やっと青コーナーにある椅子へ座る事が出来た。
一分程前、盛り上がっていた立花高校のボクシング部員達は、静まり返った。
有馬が飯島に訊いた。
「相手は、大崎先輩のどのパンチで効いたんですか?」
「左フックだよ」
「……空振りしたように見えたんですけど」
「顎をかすったのさ。顎をかすると、テコの原理で頭が揺れ易いんだよ」
飯島は、他の一年生達にも言った。
「お前ら顎は打たれるなよ。足がいうことを効かなくなるんだからな」
続けて飯島は横山に訊いた。
「横山、大崎とどっかで練習してたのか? ……お前の指示、的確だったからさ」
気の弱い横山は、ビクッとしながら振り向いた。
「……えぇ、団地の駐車場で少し……」
「団地の駐車場?」
「僕とワタッちゃ……いや、大崎は同じ市営団地に住んでるんです」
一分程前、盛り上がっていた立花高校のボクシング部員達は、静まり返った。
有馬が飯島に訊いた。
「相手は、大崎先輩のどのパンチで効いたんですか?」
「左フックだよ」
「……空振りしたように見えたんですけど」
「顎をかすったのさ。顎をかすると、テコの原理で頭が揺れ易いんだよ」
飯島は、他の一年生達にも言った。
「お前ら顎は打たれるなよ。足がいうことを効かなくなるんだからな」
続けて飯島は横山に訊いた。
「横山、大崎とどっかで練習してたのか? ……お前の指示、的確だったからさ」
気の弱い横山は、ビクッとしながら振り向いた。
「……えぇ、団地の駐車場で少し……」
「団地の駐車場?」
「僕とワタッちゃ……いや、大崎は同じ市営団地に住んでるんです」


