荒川が下がり、大崎が追う展開になった。
自分の間合いに近寄れない大崎は、手数が減っていった。
「大崎、追っ掛けちゃ駄目だ。先回りするんだ!」
飯島が叫んだ直後に、横山が声を張り上げた。
「ワタッちゃん、フェイントと横の動きだよ!」
その声に反応した大崎は、フェイントを加え、横に動き始めた。
今にも飛び込みそうなフェイントに、荒川は一瞬足を止めて迎撃するような反応をした。そして、大崎の横への動きは、荒川のフットワークを先回りする格好になった。
間合いが近くなり、大崎の手数が増えた。
ハーフタイムも近くなった時、荒川がロープを背にした瞬間があった。
「大崎、今だぞ!」飯島の声が響く。
大崎は荒川の左ジャブに合わせ、右パンチを被せた。右のクロスカウンターだ。


