(いつからだったかな…)
美月は誰もいない道を歩きながら考えていた。
家を出るときにいつもお母さんは
「いってらっしゃい。気を付けなさいよ。」
っと言ってくれた。
でも、それはなくなった。
今、家には美月しか住んでない。
お母さんはちょうど1年前に癌で死んだ。
お父さんは3年前に離婚届と通帳を置いて消えた。
定期的にお金が十分すぎるほど入金されるので、金銭的なことで困りはしなかった。
お母さんいわく、お父さんは新しい家庭をもったらしい…
それを聞いた時、初めて捨てられたのだと実感した…でも、不思議と涙は出なかった。
お母さんが死んだときもそうだ。
悲しいはずなのに…
心は痛く締めつけられるのに…
涙は一粒も零れなかった…
フッ…
(なんて無情な女なのかしら…)
美月は自称気味に笑った。

