《花月》の表札の前。
「じゃ、ここで…」
「うん…」
踵を返す。
少し歩いて、振り返る。
視線が合う。
手を振る。
少し遅れて、控え目な返し。
それだけで、頬が弛みかける。
又、踵を返す。
…雪はまだ、僕の背中を見てくれているだろうか。
これからも、応えてくれるだろうか。
『聡兄ぃに似てる』
脳裏に蘇る、親友の言葉。
雪。僕、聡兄ぃさんじゃないんだ。
雪は、僕を…。《聡兄ぃに似てる誠》じゃない、僕を見てくれてるのかな…?
手元のヘアピンは応えない。
空を見上げた。
月は雲に隠されていた。
「じゃ、ここで…」
「うん…」
踵を返す。
少し歩いて、振り返る。
視線が合う。
手を振る。
少し遅れて、控え目な返し。
それだけで、頬が弛みかける。
又、踵を返す。
…雪はまだ、僕の背中を見てくれているだろうか。
これからも、応えてくれるだろうか。
『聡兄ぃに似てる』
脳裏に蘇る、親友の言葉。
雪。僕、聡兄ぃさんじゃないんだ。
雪は、僕を…。《聡兄ぃに似てる誠》じゃない、僕を見てくれてるのかな…?
手元のヘアピンは応えない。
空を見上げた。
月は雲に隠されていた。



