サボってたことを忘れていた私は
授業中のため、しんとした廊下を
少し緊張しながら、
浜寺くんの少し後ろを
無言で歩く。
少し後ろを歩くのは
隣だとなんだか照れくさいから
無言なのは浜寺くんが話さないから
でも不思議と、
この無言が心地いい。
「いない」
「え、あ、あー……残念」
ほんとは特別猫を好きでもないから
なんとも思わないけど
中庭の入り口で猫を目だけで探す。
その時浜寺くんの隣に立つと
甘い匂いがした。
それは
甘い甘い
子供には甘すぎる
大人な
香水の匂い
「強い香水。さっきは気付かなかった」
涙をぬぐってくれた時
気づかなかった。
こんなに強いのに。
「……洗わなきゃな」
セーターを少し引っ張り
匂ってから
浜寺くんは無表情にポツリと呟いた。

