家に着き、磯田さんが車の助手席の扉を開けてくれた。

そしてまた、手で私の腕を支えてくれた。

家のインターホンを磯田さんが押した。

「はーい」

母の甲高い声が聞こえてきた。

「あら、先生…ちなつ…」

母は、目が点になっていた。

「こんばんは」

「こんばんは。ってどうして?」

「ちなつさん、最後の患者さんだったのでお送りしました」

「ありがとうございます」

「では、これで失礼します」

母は、理解出来ていない様子だった。

「磯田さん、ありがとうごさいました」

「いいえ。ちゃんと薬飲んでな。すぐ治るから」

「はい」

「中に入ってください」

母は、私を家の中に入れ、磯田さんを見送ってくれた。

「ちなつ、先生との関係は今度聞くわ。気になるけど…」

「そうしてください」

「薬もらったんやったら、何か食べなあかんね。おうどんとか食べれる?」

「うん。そのほうがいい」

母が作ってくれたうどんを食べ、薬を飲んで、早めに寝た。