恋愛文通


「何やってんだ、俺…」


酸素を求めて、深呼吸


“ちょっと落ち着いてから参加しろ”
と彼方に言われてしまった


手に持った水の入ったボトルがひんやりと体の熱を冷ましていく


壁にもたれて、ぼんやりと練習風景を眺めた


今は部活中なんだから
集中だ、集中


少し経つと頭がすっきりして落ち着いてきた、そろそろ戻らないと


一旦部活に集中しないと…


「おい、落ち着いたか」



低めの声が投げかけられた
こっちに声をかけてきたのは、彼方


「もう大丈夫。抜けてごめん」


「そうか…
バカだな、お前

声出して走るなんて」


「分かってるよ…」


はっきりばっさり物を言う彼方だけど
中学からの中だからか、
言葉のなかに優しさを少し感じた


「どーせ、あの女の子となんかあったんだろ。なんか言ったのか?」


「なんでわかるんだよ…」


察しがいいのは相変わらずだなぁ
いい先輩を持ったと思う


…また脳内にあの言葉が蘇る


「めっちゃ恥ずかしいこと言った…」


ぼそっと、彼方に事実を告白する
思わず顔を手で覆った


「それだけ?」
「それだけ…だけど…」


…かんがえてみれば、それだけだ


伊織に、俺を見て欲しいってのも本望だし


間違ったこと言ってないし


確かに恥ずかしかったし
伊織がどう思ったかは知らないけど


俺、気にしすぎ?


「…ごめん、考えすぎだった」

「ん。まぁ、うまくいってるならいいけど」


相変わらずのあっさりした返事を彼方に返された


練習戻るぞ、と彼方はコートを指差してくるりと俺に背を向ける


ほんと、面倒見がいいというかなんというか…


「李亜と仲良くな。彼方」


今言うことじゃないなと、言った後思ったけど


心のそこから彼方がいい奴だって思ってるからこそ、ポロリと口から出た


こんないい奴と李亜は付き合ってるんだから、仲良くして欲しいものだ


「…おう。」


彼方の返事を聞いて、俺は練習に戻った


迷惑かけた分、めいっぱい動かないと


頭を切り替えて、集中した


でも頭のなかから、伊織の笑顔が離れなかった