「透、何読んでるの?」

 ここで、そんな透の可愛い話をもう一つ。

「……花言葉の本。花言葉を使ったイラストを描くんだ」

 たまたま透の部屋に遊びに行った時、透は花言葉の本を読んでいた。

 遊びに来てくれたのに悪いな、と透は笑った。

 透が読書やスポーツの他に、絵を描くことも好きなことは知っていた。
 だけど、仕事にしてしまうほどの上手さだということは知らなかった。
 今読んでいる本も、仕事用らしい。


「花言葉ねえ。……奈由なら好きそう……」

 俺の言葉に、透はほんの少しだけ、頬を薄紅色に染めた。

「奈由……花言葉が好きなのか……?」

 可愛い男だな、と思いながら俺は笑いを堪える。

「分からないけど……本は読んでたかな?」

 俺の返事に、透は小さな声で、ふーんと言った後、すぐに話題を変えた。

 それから一ヶ月後、奈由は透から誕生日プレゼントを貰う。
 真っ白なマーガレットだけの花束だ。

 もしかして。

 悪いと思いつつネットで調べると、そこに表示されたマーガレットの花言葉は。
 『秘めた愛』だった。

 とうとう俺は、誰にも遠慮することなく大声で笑ってしまった。
 この時のことばかりは許してほしい。


 さて、奈由の誕生日から二週間が経つ。
 だけど奈由は、マーガレットの意味をまだ、分かっていないようだ。
 花言葉に興味がなかったのか、調べ忘れているだけか。ちょっと透には申し訳なく思う。


 だけど、大丈夫だ。

 あの二人は、どこからどう見ても両思いなのだから。

 だけどやっぱり兄としては複雑だし、もし気づくのなら自分たちの力で気づいてほしい。

 だから俺はもう少し、面白く見守らせてもらうことにする。

 二人の、純白の恋の行方を。


  END