「なーお」

「……縁!?」



あたしを見て、制帽から覗く凛々しい瞳が大きく見開かれた。



「おいおい、走るなよ!」

「ちょっとくらい大丈夫だよ。これ落ちてたの」

「あぁ、サンキュ」



小銭入れを受け取った那央は、屈んであたしのお腹に顔を近付ける。



「おはよー。起きてるか?」



そっと手をあてて話し掛ける那央に、あたしは幸せに満ちた気持ちで笑いをこぼす。


──ただいま、妊娠二ヶ月。

つい昨日、産婦人科で診てもらって確定したんだ。

まずお母さん達に報告したら、あの通りの騒ぎだったわけ。



「縁さん、おめでとうございます!」



あたし達の様子を見ていたらしい小柴くんは、まずそう言ってくれて、呆れたように笑いながら交番の中から出てきた。



「片霧さん、もう話しかけてるんですかぁ?」

「聞こえてなくてもいいんだよ。パパの愛情表現だもんなー、ヒメ」

「そしてなぜヒメ!? まだ性別わかんないでしょ?」

「なんとなく女の子な気がするから」

「えーそれでいいんすか!?」